綴る

あなたを本にすると?

篠原紙工のメンバー新島さんが東京・広尾のコートヤードという画廊で展示をしているのですが同時に開催されているワークショップが今までになくとても興味深い内容なのでご紹介しますね。

「とうて つくる」という展示のタイトル。紙媒体のものがどんどん減少していく中、本にできることは?また、人にできること、表現とは?問いに向き合いながら展示に来てくださった方と約1時間お話をし、その対話の中からその人にあった本を1時間で製本するという計2時間のワークショップ。参加者はあらかじめ用意された質問シートにいくつか答えを記入してもらい、それをもとに新島さんと話をしながらその人の内側にあるものを引き出し、新島さんが本という形にしていきます。

先週末、私はヘルプでワークショップに参加したのですが、参加者の方々は最初は緊張しながらも少しづつその場に打ち解け、予想以上に私たちにご自身のことをお話ししてくださり感激でした。「こんなに改めて自分の話をするってないですね。実生活で友達と会う時でも…もっと表層的というか、近況やメディアの話だけだったり、深い話はしないから。今日はとてもいい時間でした。」と感想をくださる方もいらっしゃいました。

たった1時間でその人が分かるなんてことはありませんが、それでもその時間は「あなた」の中から出た答えを中心に話が広がり、その時に何を考え感じているのかを言葉で表現し、あなたの一部が表れる時間。そして、聞く側 (新島さん)との間に起こった何かしらの化学反応を彼が紙という素材を使って本という形にします。とても贅沢な時間とも感じられますね。

実は自分という存在は一番近くて遠い存在。自分の顔は鏡を通してでしか見れないように、自分のことは見えない。でもだからこそ自分が一体何者なのかを知りたい。「人は自分に一番興味を持っている」という言葉が浮かんできました。これは掘り下げて考えるに価値あることのように思います。

本が出来上がって手に取った時の参加者の方々は、気分がスッキリして充実感がありそうにも見えますし、自分の分身=宝物を手にした時のような喜びにも見えました。展示とワークショップは4月23日(日) まで。ご興味ある方はお気軽にコートヤードお問い合わせご予約ください。

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