綴る

ライティングのお仕事

この度、ログハウスメーカーカタログの文章を書く機会を頂きました。クライアントの方がこの「綴る」を読んでくださっていて、私の拙い文章を心に留めていただけたことを嬉しく思うのと、貴重な機会を頂けたことに本当に感謝しています。

前任ライターさんの文章がとても美しくまとまっており、自分が担当することに勇気も必要だったのですが、「飾らず、素の私の文章でいこう。」と決意し、想像力をフル回転させながら「平屋」「ログハウス」「田舎暮らし」をキーワードに自分の生まれ育った故郷のことや、海外生活の経験、ひたすら私なりの今までの住むことにまつわる記憶を思い出しました。

何気に役に立ったことは、茨城に住む私の母が庭での草花、鳥や虫との間に起ったストーリーを面白おかしく私に話してくれることでした。数ヶ月に1度、私が両親の家へ帰ると、日常のたわいもない話をするのですが、気がづくと庭の話がよく出ているのです。カマキリが何世代も続いて庭に住みついていること、夏の夕方には家の門灯そばに小さな緑のカエルが出てきて、灯る光を眺めているように(…見える)のですが、
母はそれを「あのカエル、灯を見ながら哲学しているのね。」彼女の勝手な解釈なのですが、私も疑いもなく「うん、そうね。」と即答しながら夏の夜の楽しみとして帰るたびに門灯をチェックし「今夜もあの哲学カエルいるよ。」とお互い話しています。カマキリもカエルも何世代にも渡って私たちの庭に居ると思うと、家族というか、森(庭だけど)に住む仲間のようにも思えてきます。

両親の家で庭を通って玄関の扉を開けるという、このほんの数秒があるのと無いのとでは大違いだなぁ、と帰るたびに感じていました。自然と目に入る庭の草花、カラスの鳴き声、庭の匂いを感じるだけでも無意識で心地よさを感じている気がします。そして、それら自然が与えてくれる日々の小さな変化やストーリー、人間以外の生命体と向き合う楽しさや心の豊かさみたいな体験は、自分の感性や人間性への成長にも繋がると私は思うのです。



もう一つ、今回役に立った経験は海外での生活。私はスコットランドに住んでいたことがあるのですが、その際にある自然豊かな環境にあるエコ・コミュニティーのような所でキャラバンのような…?空間に少しの間住んでいました。
中はベッドルームや暖炉もあり、窓全面から見えるのは緑だけ、虫はもちろんのこと、時々鳥が迷い込んで入ってくるなど、なんともワイルドな生活をしていたのです。
一緒に住んでいた人がDIYが得意で家の作りは全てその人に任せ、私は時々ペンキ塗りの手伝いをしながら手作り暮らしを楽しんでいました。そんなDIY作業中も、そよ風で草木が揺れ動く音が聞こえてきたり、外を歩けば目の前は湖が広がっている環境で、その気持ち良さと、美しさの感動と言ったら…今でも忘れられません! あんな見た目ボロボロな建物でも日々の暮らしが満ち足りた感じがしたのを覚えています。

キャラバン…?犬も一緒に住んでました

これら海外経験や生まれ育った庭のことをベースに、先方の要望するイメージを重ね合わせ、文章を仕上げました。平屋といえども大きいのもあれば小さなものもありますが、今回、私の中では小さな平屋での生活を想像していました。
初めはあまり狭い家に誰かがいる生活は窮屈だろうなぁ…。プライベート空間が無いのは嫌だな…。と、いつもの私の考えなのですが、スコットランドでの経験をよく思い出すと、あのキャラバンのような空間は、ソファや本棚、家具もそれなりにあったのですが、大きな窓があったのと、そこから見える自然の風景、1歩外に出れば人工的建物など何もない自然の中、というのもあってか窮屈さを感じませんでした。私の住む今の東京のアパートより狭いはずなのに。



自然に囲まれた生活をしていたことを思い出しながら、もし必要最低限の物でシンプルに、家具などの存在も極力小さく、「何も無い空間、人間と自然」ということを中心にライフスタイルを意識したら、想像を超える心地よさが待っているのかもしれません。家には自然光と緑や土の香り、そして季節に応じて心地よい風が入り、暖炉などの火の暖かさがあれば人の心はより大らかになって、壁を作って部屋を作らなくても一緒に住む相手の存在を良い意味で気にしなくなったりするのかな?なんて思ったり。
本当に一人になりたければ庭に椅子を持って出て行けばいいし。
(季節や天気が悪かったら…どうしましょうね。)
そんなことも、私の空想上で広がっていました。私たちは日々、自分に余裕を持つということを簡単に見失ってしまうくらい、多忙な世界に生きがちですから、こんなことは夢のように聞こえるかもしれませんが。私の経験を振り返るとあのスコットランドの美しい自然があったからこそ、相手に気を使う私でもあの小さな空間に誰かと一緒に居られた。という事実もあったのかもしれないな、と今では思います。

すぐそばの湖、典型的なスコットランドのこの天気模様も大好きでした

そして、このカタログの文章を書く前に、東京にあるログハウスショールームで打ち合わせをしたのですが、木の香りがとても心地よく、そのショールームの中に入ってすぐに自分の呼吸に意識が向きました。無意識で当たり前にしている呼吸だけれど、「呼吸の質」みたいなものってあるなと思ったのです。日々の呼吸に喜びを感じられる生活って、幸せだな。その時に言葉には出さなかったけれど、こんなことを強く感じたのを覚えています。文章を作り上げている時も、過去の記憶と未知なるログハウス生活の想像力が働き、時空を超えて実はもう一人の自分が理想の平屋ログハウスに住んでいるような気持ちになりました。このカタログを手に取った方が自分なりの理想のライフスタイルがイメージできるお手伝いができていたら嬉しいです。

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