綴る

篠原紙工の本棚

こんにちは。前回に篠原紙工の新しい期が始まったことを綴ったのですが、今回も引き続き、ここ最近の社内の様子をご紹介。

6月7日は篠原紙工の休日でした。製造業と聞くと365日休むことなく機械を回してナンボと思いますよね。篠原紙工もかつてはもっと機械を動かしていたし、土曜日も仕事をしている時代がありました。今はワークスタイルも変化させて休むことで気持ちをリフレッシュさせることを大事にしています。余談ですが、この休日は社長と社員の間で6月は祝日がないからどこか1日休もうということになったとか。平日に休みだといつも週末に混み合う場所が入りやすかったりしていいですよね。ですが、こういう時こそいつもできないことを社内でやろうということになり、有志でオフィスにある本棚の整理をすることにしました。

オフィススペースには、ずらりと自分たちが制作した本たち佇んでいます。実は奥の倉庫にもたくさんあるのです。冊子もの、折加工の紙ものも合わせたら膨大な数です。それらをぜーんぶ表に出して、みんなで仕分けしました。どんな装丁かという仕様別ではなく、どんな依頼内容が多いかをチェックしていきました。制作の苦労話、とても良い思い出もよみがえって、喜怒哀楽の懐かしみが湧き出る時間でした。机に山積みになった本たちを見て自分たちはこれらを作り続けて生活をしているのだと思うと…。よくやってきたなとも思うし、正直なところ物量にもゾッとしました。これからどれだけ本をつくり続けることができるのだろうか、自分たちはどんな本を作り続けたいか、今後のヒントが散りばめられている風景でした。

篠原紙工に依頼される本というのは、いわゆる市場には出てない、本屋には並ばない本の制作依頼がとても多いのです。ブランドブック、個人出版本、非売品の図録、ポートフォリオ、企業の社内向け思想本、様々です。もしかしたら、だからこそ自由度が高く、デザイン的にも目を惹くものが多いのかもしれません。変形のサイズ、おそらく本屋さんでは扱いづらい形もたくさんあります。実際に自分たちのオフィスにある本棚にも収まらなく、その本の魅力も見せられず、どうしようかなと考え中です。

今回の本の整理の中で、感謝を込めてサヨナラをした本や冊子たちもいっぱいいます。かつては頻繁に見本として紹介していたけれど、もう出番が少なくなった、または機械の関係上社内ではもう制作できなくなったなど理由は様々です。数々の依頼の中には篠原紙工が中間位置で、依頼相手の顔が見えないままつくるものもあります。やはりそれらの本は時間の経過と共に記憶から薄くなり思い返しても「誰からの、何の案件だったっけ…」というふうになってしまいがちです。どれも大事な仕事うちの一つですが、今の私たちとしては、もっとダイレクトな仕事がしたいというのが理想。

あるメンバーが「10年後も残しておきたい、そんな本をもっと増やしたいね。」と言っていました。10年後も残しておきたい本というのは、そこにどれだけ自分たちのエネルギーをのせられたか、依頼してくれたお客さまや協力会社の方々とどんな関係性が生まれたか、喜びがあったか、やはりそれらの部分がとても大切なのです。

本棚に改めて整理された本たちの表情は活き活きしていて、次の打ち合わせでアイデアの源として選ばれるの待ち構えているようです。篠原紙工でつくった本は制作して終わり、ではなくオフィスの本棚に並ぶことでまた次の誰かのアイデアのヒントにもなっていると思います。これも小さな循環といえますでしょうか。

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