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CODEX 展示内容

4日間 CODEX が開催されるうちの2日間はシンポジウムが オークランドから近くの街、Berkeley バークリーの Freight & Salvage という会場で行われました。計6名のスピーカーたちが自分の作品をもとにアートブックにまつわる見解を述べ、アートブックを紐解き、今後の可能性へとつながるような内容の話をしていました。私の乏しいリスニング能力ではここで説明できるほどではないので割愛しますが、「アートブック」というものをアカデミックに捉え、分析して研究するほど一つのジャンルとして確立されている点は日本と全く違います。
質疑応答も活発で、参加している人たちのアートブックへの興味関心の深さを感じた次第です。今年の全体のテーマがどうやら「translation」だったようで、言葉にまつわることや、単語の音やその音が持つエネルギー、ある言語を他言語に訳す複雑さ、翻訳のアートを語られていました。言語/言葉で理解する、というのは、どこからどこまでなのだろう、と聞きながらぼんやり考えていました。
「本そのもの自体がアート作品」と見える展示品が多いCODEXですが、本には言葉が必ずついてくる、というのは「本」の定義の一つなのでしょうか。どういうコンセプトで「translation」がテーマになったのかまでは掴めなかったのですが、CODEX が考える「本」というものがどういうものなのだろうか、という素朴な疑問も出てきました。

展示されている作品の種類はというと、よく見かけたのが 詩を題材にしたものや(木・銅)版画作品。一方で写真集やイラスト集などはあまり見かけませんでした。全体的に文字物は活版印刷で刷っているものが多く、長文でページ数のあるものでも活版を使っている作品が目立ちました。活版印刷の特性を活かし、活版の限られた技術条件の中で作品を作り上げるということに価値を置いているようです。そして、東京アートブックフェアに比べると出版系で出ている人はいなく、個人で出展しているけれど、小さな出版社(アートブック系の)を経営しているという方々がいらっしゃいました。

出展者は自身で本の内容も装丁も手掛けている場合もあれば、本の内容は別のアーティスト、装丁は出展者自身、コラボレーションワークも頻繁にありました。製本や装丁デザインを依頼されたもの(commission works) も作品として展示されています。ある方は「アート作品は自由にできるけれど、依頼の作品は限られた中でバインダーとしての意見を入れてクライアントと何度も話し合いながらつくる、」と話していました。

前回も書きましたが、これらの作品の価格は何十万単位です。作品数も1点ものから多くて30や50部、購入する方々は、コレクター、大学、美術館、図書館。アメリカではこのようなアートブックの市場というのが大きくはなくとも、確実にあるというのを出展者との会話を通して実感しました。特に西海岸では昔から、印刷所も多く、ポスターやZINEなど紙媒体での表現活動が活発で、その文化が今は形を変え、アート作品としてやアカデミックな資料として活用されているというのを聞くと知的好奇心が広がります。NYで活動しているある女性が、「アートブックは秘蔵されるだけじゃないのがいいのよ。」と誇りを持って話しているのが印象的でした。なぜ、アメリカ人がこのようにアートブックに価値を置いているのか、深いところまではわからないのですが、出展者の方々はコレクターでもない、ただの視察者の私にも丁寧に説明をしてくれたところを見ると、ビジネスではなく、内側から湧き出るその人自身の表現に対する強い波動みたいなものが伝わってくる感じがしました。

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