綴る

ジャズシンガー ナット・キング・コールの思い出

篠原紙工では週に1回、希望者だけが集まって始業前に英会話をやっています。アメリカ出身の講師に会社まで来てもらって、英語を学ぶというよりは、英語の感覚に慣れる、くらいの感じでゆるく続けてかれこれ1年。

毎回、簡単なしつもんから始まり、ワントピックをシェアしながら話を広げて、最終的には全く違う話題になったり、アメリカや日本の違いから世界を違う角度で知ったりといい刺激になっています。

前回のクラスでは、秋になると人間の食欲は自然と湧いてくるもの。秋の味覚で一番好きなものはなに?というしつもんで「chestnut (栗) 」という単語があがりました。すると講師のクリスが「『Chestnuts Roasting on an Open Fire』という曲があるよ。ナット・キング・コールという歌手の有名な曲でクリスマスシーズンに流れる曲だよ。」と曲の紹介をしてくれました。

ナット・キング・コールはアメリカ生まれのジャズ・シンガー・ピアニスト。実は、彼の曲は私にとって子供の頃の思い出の音楽のひとつ。曲のタイトルまでは覚えていないけれども、クリスマスソングでナット・キング・コールといえば、あの曲だろうなぁ…と思いながら私の頭の中ではメロディーが流れていました。英会話の時間で子供の頃の自分が心の中にひょっこり出て来て、懐かしさというか、どこか哀愁を感じてしまいました。

私が子供の頃、母が車の中でよくカセットテープで音楽をかけていて、今思えば、私はそこからいろいろな音楽のベースを吸収していったように思います。その中でもナット・キング・コールはよくかけていて、母は「いい曲でしょう。黒人の声ってなんていいんでしょうね。この込みあげるような歌い方が最高だね。」どちらかというと独り言のように話していて、子供の私に音楽を教えようとか、そんな感じはしなかったのですが、鼻歌を歌う機嫌の良い母と車の中で過ごす時間はとても好きでした。

助手席に座る幼い私はジャズがどんなだとか、黒人音楽のことなんて何も分かっていませんし、髪をピシッと固め、朗らかな笑みを見せるナット・キング・コールの顔を見て「ふーん。なんだか不思議な笑顔の外国人だな…」そんなもんでした。でも、車を運転する数十分だけでも、黒人音楽の世界に浸る母を見て、なんだか大人の世界がとても楽しそうで、魅力的に見えて、早くこういう音楽がもっと分かるようになりたいな…私も大人になったらこうなるのかな?と思ったのことをよく覚えています。

今思えば、忙しい子育ての中で、車の中で音楽を聞くことはの母にとっての唯一の楽しみだったのかもしれません。家事をしながら聞く音楽よりも、車の中という行動も空間も限られた中で集中して好きなものに触れることで気分転換になっていたのでしょう。

いつか私も黒人音楽やジャズが心からいいな、好きだなと思えるようになるのかな…?と思いながら大人を観察していた私は自分の予想通り、音楽好きの少女になり、退屈で憂鬱で一刻も早く大人になりたいと切望していた10代の学校生活を様々なジャンルの音楽が支えてくれたのでした。
世代的にナット・キング・コールは私にとってもオールディーズ、もはやクラシカルな懐かしの名曲ですが、今の日本の若い人にとってはどんな風に聞こえるのでしょうか。ジャジーJAZZYすぎる?もはや渋いジャズバーにでも行かないと聞くチャンスはないのかな。今は音楽のジャンルも幅広いし、本当に(ほんとに!)手軽に世界中の音楽がいつでもどこでも聞けるから、チャンスがあったら時に古い50/60年代の音楽を聞いてみるのもいいと思う。

https://www.udiscovermusic.jp/stories/best-nat-king-cole-songs

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