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アトリエシムラさんの織物


写真:刑部信人

芝木好子 小説集「新しい日々」の特装版に使われている赤い裂は染織家 志村ふくみさんの精神を引き継ぐ染織ブランド アトリエシムラ さんからご提供していただいたもの。https://www.atelier-shimura.jp/
草木染め、という言葉は聞いたことがあるけれど、葉や花からだけではなく、根や枝からもあんなに豊かな色が生まれてるとは知りませんでした。
アトリエシムラさんは「植物の生命からいただいた色」と表現していらっしゃいます。とても美しい言葉です。実際に篠原紙工で制作した書籍「新しい日々」に使われた織物を見て手で触ると色に深みと重みがあり、よくみると様々色が重なり合った赤にも見えます。

志村ふくみさんの貴重な裂帖を見せていただいたことがあるのですが、全てに穏やかさがあり、意識をしなくても視覚的に馴染む感じがあります。好みは抜きにして、その裂を眺めていると精神がニュートラルに戻るような感じがするのです。決して主張することはなく寄り添いただそこに在る自然色。言い換えれば森や自然の中を歩いている時に似た感覚なのかもしれない。自然から頂いているのだからそのような感覚になっても当然かもしれません。

同系色の色が重なる複雑さ、淡さ、深み、パッと見ただけではその色の魅力は伝わりにくいのだけれど、なぜだかじっと見てしまう、というのが自然色と織物の魅力の一つなのだと思います。簡単には理解できない、でもなぜだか心奪われてしまう…謎めいた魅力も自然にはあると思います。地味で目立たないのに気になって仕方ない草花や植物を見つけるとよくそんなことを思います。

「自然」という言葉は広すぎて、時々使うのが難しいと感じる時があります。自然とは?ナチュラルが一番、自然な感じがいい、自然で癒される、自然は優しい、自然は恐ろしい。色々表現はありますが、その物が持つ本質が発揮されている状態が自然ということなのではないかと思うのです。そして、それが結果、美しいということ、時には恐ろしいということ。美しさというのは一瞬でわかるものばかりではなく、じっくりと感じてから心に響く美しさもこの世にはたくさんあって、、、そういう瞬間に出会うと幸せな気持ちになります。最近、そんなことあったかな?

9月4日の芝木好子 小説集「新しい日々」のイベントではアトリエシムラさんも篠原紙工に出店してくださいます。植物の生命から頂いた美しい色を一つ一つ丁寧に紹介されている世界観にこれを機にぜひ触れてみてください。

イベント詳細:https://shinoharashiko-event-22-01.peatix.com/

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