綴る

モーションシルエットとCODEX

新島さんが造本を担当した、モーションシルエットは「SILHOUETTE BOOKS」というユニット名義で出している本です。(今までも何度か説明したことありますね)デザイナーの梶原恵さんと篠原紙工の新島龍彦の2人が学生時代に制作した作品で、2015年には Best Book Design from all over the World 2015  Bronze(世界で最も美しいコンクール )では銅賞を受賞しています。
今回、CODEXの出展作品としてこちらの本も連れて行ったのですが、案の定とても人を惹きつける役を果たしてくれました。

前回に綴った「神迎え」の本とはまた違う入りやすさというか、人の心を瞬時につかむ力がモーションシルエットにはあります。私たちのCODEXのブースをオーガナイズしてくださった方も「アメリカ人、こういう本にとても反応すると思います。」とおっしゃってくださったのですが、会場で見せた際に出る最初の一言が「How clever !」と口を揃えて皆さん言っていたことがとても耳に残っています。スマートフォンのライト機能を使うというのも現代にあっていて賢い、という点も確かにありますね。一つの影なのに、見開きで二つの物語が生まれるというところに賢さを見出してくださったのだと思うのですが。

こちらの方々は、感情を言葉や表情に乗せるのがとても豊かだなと思います。モーションシルエットの本を説明すると、顔に笑みが溢れて、こちらも説明しがいがあります。展示期間中、毎日話をする側としても、モーションシルエットはトータルのバランスで素晴らしい本だと改めて思いました。ポップアップの立ち上がりの美しさやレーザー加工などの技術面、子供だけでなく、大人も見入ってしまう美しいイラスト、絵本なので内容に軽やかさもあり、この本はこの先も人々に喜びと楽しさを与えるだろなと思っています。

私たちが2024年にCODEXの下見に渡米した際、日本のアートブック事情と違うと感じたのは、ライブラリアンや美術館の方、コレクターが多く来るということでした。彼らは数万円する本に疑問を抱いておらず、アート作品という目線を持って会場に来ています。今回、私たちは、いつもとは違う価格帯の世界を肌で感じることができました。神迎えもモーションもそれなりの価格はしますが、その場で「高すぎるよ…」という表情の人とは会わなかった、と感じています。(内心思ったかもしれませんが)CODEXの主催側もおすすめアーティストの作品リストを事前にお馴染みのライブラリアンやキュレーターに渡しているようで、獲物を得るかのような真剣な目で見ている人もいらっしゃいました。来場者はすべてネーム(Visitor/Exhibitor/どこの会社や機関か…etc)を首からぶら下げるのですが、あえて隠す関係者もいるとか。

そして、大変ありがたいことにモーションシルエットは3冊が旅立っていきました。ご購入を決めてくださった方々とも気持ちよく交渉ができたと思います。そのうちのお一人がワシントン州にあるアートブックを多く所蔵している美術館の方でした。私たちにとっては今回、それが一番の大きな収穫でした。もちろん、個人でご購入していただくのもとっても嬉しいです。ただ、CODEXに出る一つの意味や期待していたことは、文化機関の方々との出会いです。図書館、美術館、大学機関、美術コレクターなど、購入してもらう方によっては、後世に残るブックアートにもなるということであり、作品を資料として使ってもらえるということも光栄なことです。

美術館や図書館で大切に保管され、時期によって紹介やキュレーションしてくださるということはたくさんの方に見ていただける機会もあるということ。篠原紙工としても、私たち個人的にも自分たちが作ったものが、売れるだけでなく、社会に、世界に、良い波を及ぼすような存在であってほしいと思います。ブックアートの世界は日本ではまだ広がっていないように感じますが、この分野において少し貢献できたという気持ちとCODEX初参加で自分たちの目的の一つが果たせたと感じています。

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