綴る

ダンスのように

2023年にオランダ・フリースラント出身の製本家Wytze Fopma(ヴィッツェ)と出会いその場で意気投合し、2024年には篠原紙工から新島龍彦が、そして今年の3月にはヴィッツェが篠原紙工へ来てお互いに仕事の交換留学をしました。
その様子がカルチャー誌「NEUTRAL COLORS」に掲載されています。

発行人である加藤さんとは新島さんも以前より交流があり、ISSUE6のテーマが「滞在」ということは知っていたので新島さんの方から今回の交換留学の話を加藤さんに持ち込みました。私はどのようにNEUTRAL COLORS の本が編集され、文章が作られていくのかを見るのも楽しみにしていました。

加藤さんの提案で新島さんとヴィッツェの滞在記を交互に交えながらページを構成していこうということになりました。新島さんは毎日が刺激的なフリースラントでの出来事を文章にするのは心や思考の整理となってスッキリしていたようですが、ヴィッツェは文章があまり得意ではないということもあり、日記形式でも良いから東京滞在の日々を書いて欲しいと私たちからお願いし、メモをとってもらいました。しかもフリースラント語→英語→日本語の順の翻訳ですから、やや本人の意図からは微妙に言葉のニュアンスが変わってる可能性もあります。それもあってか、新島さんの文章とヴィッツェのとではやや雰囲気というか、感情の勢いには差があるかもしれませんが、(ヴィッツェは割と日々の事実を書いています)2人の文章を読んで読者の方がストーリーを想像してもらえれば嬉しいです。

「ある職人たちのダンス」というタイトルで彼らの滞在はまとめられています。
ヴィッツェが「タツ(新島さん)と仕事をしているのはダンスのようだ」と取材の際に話していたところからその言葉が使われたと思います。私も2人の仕事ぶりを見ていてお互いがお互いの速度、動き、次の動作、間、全てを微細に感じ取りながら動いているのが分かりました。人も機械の一部となってリズムよく仕事が動き、本が積み上がっていく様子は気持ちが良いです。ヴィッツェも篠原紙工も量産を基本としているので、時間数という単位がとても重要になってきます。それも言わずとも理解しあっているからこそリズムがお互いにとれて心地よかったのだと思います。

「ダンスのように」
彼らの仕事だけでなく、どんな仕事も他者と何かを動かすときに、気持ちよくダンスのように動けたら、それは良い仕事のしかた、と言えるのではないかと思います。相手が求めていること、やろうとしていることはこういうことだから、こういう風に動いていた方が、やっていた方が、スムーズなのではないか。少し先を見ながら動く、やや先にささやかな仕事をしておく。その小さな仕事に気づかれない場合も多々あるかもしれないけれど、互いに手を差し伸べあってるとき、つまりはお互いに共通意識を持ちながら相手を思い合うとき、ダンスが生まれるのかもしれませんね。

(*)篠原紙工のInstagramでは今「NEUTRAL COLORS」の本の写真をピン留めしています。そのコマの最後はヴィッツェと新島さんがフリースラントで作業している動画なのですが、倍速とかにはしていません。本人たちのスピードです。もうひとつ、篠原紙工STORESで「NEUTRAL COLORS」購入できます。

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