神迎えとCODEX

2026年のCODEXは2月7日(土)〜10日(火)の4日間。Oakland Marriott City Centerというホテルのバンケットルームが開催場所でした。初日の7日は10時からアーティスト達が各自のブースで設営をし、一般オープンは12時半からとわりと余裕を持ってのはじまりです。私たちは10時より少し前に行き、地下鉄を歩いていると、目の前に大きなスーツケースを持った女性が同じように「ここでいいのか…」というような表情をしながら歩いていました。話しかけようかな、と思った瞬間、向こうから「You…CODEX?」と聞かれ、「そうだ。」と答えるとお互いに安堵した表情を浮かべ、一緒に地下鉄から地上へと向かいました。

私が彼女にCODEXの参加は何回目か、と聞くと、彼女はドイツから何度も参加をしているベテランアーティストでした。それを表すかのように、展示会場に着くと彼女は2年ぶりに再会したであろう出展仲間に「会えて嬉しい!!元気だった?」と喜びに溢れた挨拶とハグをかわし、それぞれどんな2年間を過ごしていたかを語り合っていました。その姿を見るだけでも、CODEXは何度も参加することでアーティスト同士がつながりをつくっていく、関係性が強いブックフェアということが垣間見れます。参加アーティスト同士がまるで久々に会う親戚や親友のような雰囲気。

私たちは初の出展者側。何回か重ねて参加していたらこのような仲間ができるのだろうか。そんなことを想像しながら、「神迎え」「はじまりの風」「モーションシルエット」の3作をブースに並べ、同じブースで展示を行う、アーティストの足立涼子さんと松永亨子さん、主催者のAmu Artsの相澤さんの到着を待ちながら、これからどんな4日間になるのだろう、とワクワクと私はやや緊張もありました。
全員揃ったところでブースの見せ方、見え方を考えながらつくっていると、他の出展者の方々が私たちの作品を見て、「この本、美しいね。後でまたみにくるよ!」とたくさん声をかけてくれます。我々が持参した作品たちがCODEXという舞台でどんなふうに受け止めてもらえるのか、たとえご挨拶がわりの声がけであったとしても初めての者にとっては、その言葉から勇気をもらえた、そんな気持ちになっていました。

作品の中でも「神迎え」の特装版は大きさもあり一番目立ち、説明する回数もダントツでした。私たちは製本工程の部分で神迎えの本に関わりましたが、直接の作者ではないので、作品説明に関しては新島さんと私とで何度も話し合い、表現するのに適切であろうと思われる英単語を選び、要所を掴み、話しやすいようにまとめて用意をしていました。
とはいえ、対面コミュニケーションの実践となると、相手の反応もありますし、内容も日本の神様、隠岐島、神楽…と説明にそれなりの文化背景を話すことが必要で、その時々で話も盛り上がったり、そこまで興味をひけなかったり、毎回が学びのようでした。自分の心意気としては、どの方とも丁寧にお話ししたかったので、そのもしかしたらその真剣さが自身にも返って来たのか、CODEXの4日間を通して、とことん「神迎え」の本と向き合った気がしています。

国が変わっただけなのに、日本で見ていた時の「神迎え」とは見え方が違うように感じれたのも私の中の大きな発見でもあります。国が変わっただけ、と書いてしまいましたが、その点は実は大きなことで、自分自身も、ものの放つエネルギーも国、環境によって変わるということはきっとあると思います。

ありがたいことに、神迎えの書林版は数冊購入してくださる方と出会い、私たちの手元から旅立ちました。そのうちのお一人は、ちょっと不思議なご縁と言ってもいいくらいのお話があるのでぜひここでご紹介したいと思います。
CODEXの3日目。とても品のあるアジア系の女性が私たちのブースに近づいて来ました。彼女は、静かにじっくり神迎えを眺めていたので、土地のことから話してみようと、私が隠岐島の英語版の地図をご案内したところ、「Oh …yes. I’ve been there.(ここよ。わたし、行ったことあるわ。)」と静かに、しかし力強くお話しされ始めました。「え!本当に!?隠岐島に?」私も思わず声を出し、私も彼女も驚きと笑みを交えながらお互いの目をしばらく見つめ合いました。
彼女は日本にルーツを持つアメリカ人の方で、子供の頃に日米国際交流か何かで隠岐島に行ったことがあるということでした。私はこのCODEXに参加するために隠岐島に行き、土地の持つ感覚は掴んできていたのですが、あの島の雰囲気を共有できる方とここで出会えるとは全く想像もしておらずで、とっても興奮してしまいました。

神迎えは人のご縁を引き寄せる不思議な本だと改めて思います。女性はそんなに多くのことは語りませんでしたが、しばし時間を置いて、静かに購入を決めてくださいました。
書林版の本が彼女の心に何を残すのか、祖先の日本なのか、子供の頃の思い出の島なのか、神が宿るという精神性なのか、いずれにせよ、彼女のそばで静かに寄り添う本であれたら嬉しいなと思います。
