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写真集『遠い渚』

制作年:
2016
クライアント:
株式会社山田写真製版所
技術名:
PUR製本、ドイツ装、抜き

■プロジェクト概要
表紙や本文の至るところに窓の様な穴をあけたドイツ装という特殊な製本で、なおかつ写真集の世界観を昇華させる美しい造本を実現したいとクライアントから相談を頂き、当社にて製本を担当する事になりました。
写真集のコンセプトは、「2011年の東日本大震災以降、津波や地震の被害があった場所の木々を作者は撮り続けている。その際にふと陸地に浮かぶ島のような岩山が気になりだした。たいていその岩山には松が育っていて、現在は陸地だが、もとは海に浮かぶ小島だtooinagisa_3.pngったのだろうと思う。その岩山はたいてい、しめ縄が巻かれていて信仰の対象となっている。海に浮かぶ島、陸地に挟まれた島、陸に浮かぶ島。どれも興味深い対象である。陸に浮かぶ島は海から遠く隔てられても、海に浮かんでいた時を忘れていないのだろうと想像する。」 ~『遠い渚』写真展覧会案内状より抜粋~ であり、このイメージに合わせた写真集を製作する為に 作家の小松透様とクライアント、当社とで打ち合わせを重ねました。

■技術説明
小松様ご自身でつくられた束見本と小松様の完成イメージを元に当社から今回に適した製本方法として、製本後の背がフラットになり本文の開きがよいPUR製本を提案し、採用。表紙は複数の異なる紙同士を貼り合わせる合紙加工を採用したのですが、通常は複数の異なる紙を合紙すると紙が反ってしまい、美観が損なわれてしまいます。そこで紙を貼る順番や貼り方で反りを軽減するノウハウを駆使し、今回の仕様に適した貼り方、紙の種類を決定。この冊子の1番の特徴でもある表紙と裏表紙の丸い窓抜きや本文の間に差し込まれるペラへの窓抜きなどを作業効率と仕上がりの精度の両立する加工方法を探りました。難関箇所は、本文の間に穴の空いたペラを挟む仕様であることから 通常の折り丁からの丁合いが不可能であり、本文全てをペラ丁合いにし、表紙から見返しまでズレない様に抜くために1冊ずつ手作業で抜き作業を進めた点でした。その結果、求められる要件を全て盛り込み、仕上がりの美しさを兼ね備えた写真集が出来上がりましtooinagisa_1.pngた。

■その他
世界で最も美しい本をつくる出版社として有名な「シュタイデル社」が主催した「Steidl Book Award Japan」において今回の『遠い渚』がグランプリを受賞されました。最終選考のシュタイデル社代表のゲルハルトシュタイデル氏と小松様の面談時には、この写真集をゲルハルトシュタイデル氏が手に取り、さわり心地や本の香りを十分に確認したのち、とても気に入ったとの嬉しい感想をいただけたと小松様よりご報告いただきました。
■作家の小松透様からのコメント
手芸で作られた見本を元に手工業製品としての本の形を限られた予算内で仕様や製本方法をご提案頂き理想を超えたものになり嬉しく思います。出来上がった本を見たとき、自分の本ながら本っぽくなくとても可愛く思えました。実は表と裏表紙の丸窓のサイズが違うのですが、それも実現されているのを改めて確認した時にお願いしてよかったと改めて思いました。今後、独Steidlで2ndエディションを制作できる機会を与えられて嬉しく思いますが、日本の高い印刷・製本技術で出来上がった本を超えるハードルをSteidlに課したと思っています。 

【仕様】
用紙:<表紙>風光110kg+NPCC#34
<見返し> サガンGAプラチナホワイト 四六/170kg
<本文>OKブリザード 四六/51.5kg、モンテルキア 四六/112kg
<差込>OKブリザード 四六/86kgサイズ :250×250mm
製本:98頁PUR無線綴じ、ドイツ装(表1-4厚紙ベタ貼り)
加工:窓抜き
数量:400部 

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